ウラノス・エコシステムへの期待から見た登記制度の信頼確保の道筋

資源循環の分野では、再生資源の品質と流通の信頼性を確保するために、サプライチェーン全体でのデジタル化とデータ連携が不可欠とされている。特に、ウラノス・エコシステムのように、国際的なデータ流通における「トラスト(信頼)」の概念を重視した仕組みは、再利用資源の履歴管理や透明性の確保を可能にする点で、高い評価を受けつつあるようだ。
このような動向と対比されるのが、我が国の不動産登記制度である。不動産取引においても当事者間の信頼性を担保する仕組みが求められるが、日本では登記に「公信力」がなく、登記の義務も限定的であるため、登記情報の真正性は保証されていない。その結果、過去には「地面師詐欺」など、偽造書類と面談によるアナログな本人確認の不備を突いた重大事件が発生した。
これを受けて、ICチップ付き身分証の読み取りによる本人確認の導入が進められたことは、一定の前進といえる。しかし、いかに本人確認を厳格化しても、「真実を反映していない可能性のある登記記録」がベースである限り、制度全体の信頼性は本質的に担保されない。たとえ本人確認が完璧でも、登記されている所有者が実際の権利者であるとは限らないからだ。
資源循環分野が、データ連携と制度設計によって全体としての「信頼性」を確保しようとしているのに対し、不動産登記制度は依然として「個別取引ごとの本人確認」に頼っている。これを改めるには、登記義務の強化とともに、トラスト・ネットワークの活用を含めた抜本的なデジタル・トラスト基盤の構築が求められる。 (森下伸郎)
