中国・上海でプラスチック製品禁止令が施行

2025年9月1日から上海市で「使い捨てプラスチック製品」の使用禁止・制限が強化された。人口約2,500万人を抱える巨大都市でプラスチック削減への強いコミットメントを示すものであり、違反した企業には最高10万元(約210万円)の罰金や営業停止命令が科されるとのこと。
従来の経済成長一辺倒の発展モデルから脱却し、強力な執行体制を伴うことで実効性を高めていることと、巨大な経済規模と人口を抱えながら、環境負荷を軽減し質の高い発展を実現するという課題への挑戦を示すものとして注目される。
東京都の3倍の面積、1.7倍の人口を抱え、東京に迫る経済規模を有する上海市、中国政府の直轄市として一見、強権的な行政手法と思われる側面もあるがその経緯と実績、実例を調べると法的な枠組みと経済的な誘導(インセンティブ)、市民に対する広報(ユーモラスな基準、アプリの提供)と企業への技術指導を組み合わせることで、巨大都市における環境規制の実行可能性を高めてきたことによる成果であることがよくわかる。
かつて中国は世界最大の廃プラ輸入国として国際的なリサイクル市場を牽引してきた経緯がある。安価な労働力を活用した人海戦術と再生ペレットに対する強い国内需要を背景にプラスチックのマテリアルリサイクル市場という経済的基盤を構築した。2018年の廃プラ輸入禁止以降、中国政府は環境対策基準を満たした大規模で近代的なリサイクル工場への投資と建設を推進し、高度な自動選別技術やケミカルリサイクルを含む高付加価値なリサイクル技術の開発・導入を加速しており、国際的な技術水準に追いつき、追い越そうという動きが活発化していると思われる。
一方、日本国内に目を向けると民間企業の技術開発や業界団体での合意形成が推進力の役割を担い、政府は補助金や先進的取り組み事例の情報発信、法改正のための有識者会議や各種委員会での丁寧な議論、その結果努力目標を明文化する程度にとどまる、との印象が強い。
今後の推移について注目したい。(山本)
